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(en) 不整地走行ローバー

不整地を縦横無尽に移動する「脚車輪ハイブリッド型移動ロボット」の開発と運動制御

当研究室では,2015年以降,油圧ヒューマノイドロボットで培った全身運動制御技術を車両系ロボットに展開しています.その狙いは不整地を縦横無尽に移動可能な「モバイルベース」の実現です.ベースの上にマニピュレータなどの既存のパワーツールを搭載するだけで,様々な力仕事を支援することができます.ここで紹介する脚車輪ロボットは,車輪機構と脚ロボットの「いいとこどり」を狙ったロボットです.脚の利点とは,離散的な接地点選択と多様な動作姿勢です.また,車輪の利点とは,高効率性と高速移動能力です.さらに,ヒューマノイドロボットの研究で生み出した「関節トルク制御による全身運動制御技術」を導入しているため、路面形状や外乱などの変化に対して,特別な外界センサーを用いることなく,ベース・脚・車輪を協調動作させながら柔軟に対処することができます.従来の油圧とは異なる,新しい使い方と言えるでしょう.

HYDROVER

農業用移動ロボットの基礎研究として企業と共同研究している全油圧式のローバーです.このロボットは、駆動輪を含めて全関節をトルク制御することができます.脚車輪ロボットは力制御による全身運動制御と相性が良く、地面への接地荷重とトラクションを任意に操作することができます.この特徴を活かせば,たとえば,制御不能になるスリップを発生させないよう,力加減をしながら走行することが可能となります。

 

油圧ローバー Hydrover I (2015)

 

油圧ローバーによるログの乗り越えの様子(学内のフィールド実験場)

油圧ローバー Hydrover II(2017)

プロジェクト内で試作された2号機は1脚あたり3自由の関節と1つの駆動輪を持ち,合計16自由度です.車重は331 kgです.

(動画)動的な姿勢安定性を確認するための、シーソーを用いた路面揺動実験と台形状スロープを用いた踏破実験

 

CRAWHEL

足場の悪い建設作業の支援に使える低重心のモバイルプラットフォームを目指して,脚と車輪が別々に胴体についている,いわゆる「脚・車輪分離型」のロボットを開発しています.大型の建機が進入できない軟弱地盤や傾斜面等の不安定な地形において,外側に大きく張り出した脚によて広い支持領域を確保し,ベースの位置と姿勢を安定に保ったり,ダイナミックに動かす役割を持ちます.軽量な脚機構には油圧による力制御が実装されているため,足場が急に崩落しても,素早く踏みなおすことで車体の転倒を防ぎます(図中d).油圧アクチュエータの力制御により、柔軟に衝撃を受け流すことができるのです.また,ロボット重心の真下にある車輪部分は、車体重量のほとんどの部分を支え,脚への負担を減らすことができます.車輪は単に平地における高速移動を実現するだけでなく,車輪を地面につけたままベースの制振や転倒回避動作をとったり,脚と強調しながら高い段差を昇降したりできます.

従来のアウトリガーを備えた建機(a,c) と提案するコンセプト機(b,d) の比較.(c,d) は地盤が崩落した際の比較.

脚車輪分離型 CRAWHEL(2015-)

試作した初号機の自由度は4脚2輪の計16で,全長は2m,重さは145kgです.屋外でも作業ができるよう,モバイル油圧パワーユニットを搭載しています。

(動画)0.5 mの高さから足場を崩しているが胴体の位置・姿勢をほとんど崩すことなくバランス

その他

2脚型 G1-wheel(2019-)

2脚でバランスを取りながら走行するロボットの研究開発も行っています.

発表論文

  1. S. Hyon, Y. Ida, J. Ishikawa, and M. Hiraoka, “Whole-Body Locomotion and Posture Control on a Torque-Controlled Hydraulic Rover,” IEEE Robot. Autom. Lett., vol. 4, no. 4, pp. 4587–4594, 2019.
  2. S. Hyon, Y. Ida, K. Ueda, J. Ishikawa, and M. Hiraoka, “Development of HYDROVER , a Torque-Controlled Hydraulic Rover,” Field and Service Robotics, Springer, 2021.(DOI: 10.1007/978-981-15-9460-1).
  3. K. Oda, Y. Yasui, Y. Kurose and S. Hyon, "Enhancement of a Leg-Wheel Mechanism by Hydraulics toward Compliantly Balancing Platforms for Heavy Duty Work,'' Advanced Robotics, Vol. 35, No. 23, PP. 1450-1467, 2021    DOI:10.1080/01691864.2021.1980102
  4. 織田健吾, 井田裕介, 石川淳一, 平岡実, 玄相昊,“全身トルク制御可能な油圧ローバーの実現”,日本ロボット学会誌, vol. 40, no. 5, 2022.
  5. 玄相昊, “油圧による柔軟で機動性の高い多脚ロボットの実現,” 日本ロボット学会誌, vol. 37, no. 2, pp. 150–155, 2019.
  6. 大谷優 and 玄相昊, “油圧駆動式平面二足走行ロボットの開発,” in 第19回計測自動制御学会システムインテグレーション部門講演会(SI2018), 2018, pp. 203–204.
  7. 玄相昊,井田裕介,植田晃介,石川淳一,平岡実, “油圧式4脚4輪移動ロボットの全身運動制御,” in 第19回計測自動制御学会システムインテグレーション部門講演会, 2018, pp. 2014–2017.
  8. 井田裕介,石川淳一,平岡実,玄相昊, “油圧式ローバーの最適接触力分配による不整地適応,” in 第24回ロボティクスシンポジア講演論文集, 2019, pp. 112–113.
  9. 榊原康平, 井田裕介, 石川淳一, 平岡実, and 玄相昊, “駆動輪と受動輪を有する油圧式脚車輪ローバーの 最適接触力制御による4輪及び8輪スロープ走行,” in 第37回日本ロボット学会学術講演会, 2019.
  10. 織田健吾, 安井雄哉, 黒瀬裕一郎, and 玄相昊, “不整地作業用脚車輪型プラットフォームCRAWHELの開発,” in 第39回日本ロボット学会学術講演会, 2021.
  11. 織田健吾,松井俊樹,小野颯之介,玄相昊,“脚車輪型プラットフォームCRAWHELによる接触力と車輪接触点速度を同時決定可能な軌道追従制御,”第23回計測自動制御学会システムインテグレーション部門講演会,2022,pp 548-551.
  12. 織田健吾,松井俊樹,小野颯之介,玄相昊,“脚車輪型ロボットの冗長自由度を使ったモデル予測制御,”第28 回ロボティクスシンポジア,2023, pp 52-55.

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2024/06/23

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