クリーン水圧ロボット

危険な場所でも動く、無害な水圧ロボットシステム

概要
実施例
発表論文

「温故知新」の水圧技術:エアハイドロサーボ

電動技術が既に十分にカバーしている、比較的低いパワー領域においても、液圧駆動のチャンスがあると考えています。それが水圧です。応用先は、たとえば上述のフィールドロボット分野です。作業に必要十分なパワーが出せて、地球環境にも人にも無害な駆動技術として、水圧ほど魅力的な技術はないと思います。ただし、ご存じのとおり、水圧は液圧技術の中では最古参でありながら、高圧化と潤滑性の要求から、油圧に置き換わってきた歴史があります。具体的には、ポンプやバルブ内部の高速摺動部における「摩擦」と「キャビテーション」の問題が水圧技術の普及を妨げてきたと言えるでしょう。そこで、異端児たる私たちは、あらゆる機械に使える万能な水圧技術ではなく、「ロボットに使える水圧技術」を目指します。

AHSB (Air-Hydraulic Servo Booster)

最近私たちが発明した水圧駆動技術がAHSBです。これは、古くから存在する空油増圧器(エアハイドロブースター)にフィードバック機構を組み込んで「サーボ化」することによって、ポンプを用いることなく中・低圧(~14MPa)の圧液を発生し、その力と速度を自在にコントロールする方法です。ここで空油増圧器とは、空気圧を利用してプランジャーを動かすことで、高い水圧を発生する機構です。空気圧ピストンの面積と水圧プランジャーの面積の比がそのまま空油増圧比になります。制御のために空気圧弁を利用しますが、水圧ポンプを用いないため、水圧機械特有の難問をうまく回避しているのです(逃げるが勝ち?)。増圧比はギヤ比と同じ効果を持つため、力を増やすと同時に、適切な減速比を実現するため、精密なフィードバック制御に好適です。現在、いくつかのパターンでシステムを検討しており、基本性能が確認されたものから順次、マニピュレータ等のロボットに展開します。

文字通りの「離れ業」

新しい水圧ロボットは、水圧ホースで接続した駆動装置で動かしますが、ホースは10m以上の長さをとれます。ロボット本体は人が持てるほど軽量に作れます。最近多くの家庭に普及した、市販の高圧洗浄器を想像してみてください。ホースの先にあるロボットが力仕事を代替します。駆動源を外部に持つこのロボットは、構造が極めて単純で、きびきびと動きます。水の中に沈めることさえできます。通常の屋外環境はもちろん、従来の電気ロボットが簡単に入れない泥の中や、人に害を与える危険な場所、高温多湿環境にあっても、「しっかり力を出して働く」ことができます。文字通りの「離れ業」と言えるでしょう。

完全無害の価値はどれだけ?

作動流体は家庭用水道水です。長時間使用すると水がアクチュエータの外に染み出ることはありますが、無害ですし、感電の心配もありません。油のようなベタベタ、嫌な臭い、変色はなく、環境を汚染しません。万が一本体が破損しても、構造が単純な金属製品ですので、修理や置き換えは容易でしょう。

もちろん、良い話ばかりではありません。AHSBの明らかな欠点は駆動源のサイズです。増圧のために、先端のアクチュエータよりもはるかに大きいシリンダーを動かすわけですから、軸数が増えると駆動源もそれに比例してサイズが増大します。軽量化は可能ですが、省スペース化は原理的に不可能です。それでもなお、このクリーンロボット技術が必要とされる場があるのか、「人新世」の世の中に問わなければなりません。

実施例:単軸水中アーム

(工事中です。もうしばらくお待ちください。下記は開発途上の映像です。)

発表論文

  1. S. Hyon and K. Akama, "Air-Hydraulic Servo Booster Toward Submersible Water-Driven Robots", IEEE Robotics and Automation Letters, vo.6, no.2, pp.1966-1972, 2021.
  2. 赤間一太, 谷口友美, 玄相昊, "水圧ロボットの空気-液圧サーボ増圧器による遠隔トルク制御", 日本ロボット学会誌, vol.39, no.4, 375-378, 2021.
  3. 赤間一太, 玄相昊, "水圧ロボットアームの空油圧サーボブースターによるインピーダンス制御", 第21回システムインテグレーション部門講演会, 2020, pp. 2932-2933.
  4. 赤間一太, 谷口友美, 玄相昊, "水圧ロボットアームの空油サーボブースターによる遠隔トルク制御", 第38回日本ロボット学会学術講演会, 2020.
  5. 玄相昊, 谷口友美, 大谷優, "空気圧で操作する水圧アクチュエータ", 2019年秋季フルードパワーシステム講演会講演論文集, pp.32-34, 2019.

2021/10/10