当研究室のミッション

ロボットの機構・駆動技術の発掘と進化、システム構築から運動制御・学習アルゴリズムの開発運用まで

ロボットに好適なアクチュエータ?

ロボットや機械の「要」であるアクチュエータは、70年代まで全盛期にあった流体圧式(油圧や空気圧)は一部の例外を除いて退き、多くが電動式に置き替わりました。工場内から家庭内へ、そして農林水産、土木建築、災害対応といった屋外フィールドへのロボット導入が試みられていますが、ここで活躍するのは電動ロボットでしょうか?私は、そうとは言い切れないと思っています。もしそうであったならば、油圧ショベルなどはとっくの昔に電動化されていたはずです。誰でも容易に理解できる技術が世の中から消えることは考えられません。技術は適用する相手が居るわけで、要・不要と端的に割り切れるものではありません。

そうはいっても、今や、油圧が活躍していた自動車や飛行機でさえも電動化に向けた大きな流れの中にあり、メーカーにおける油圧技術者の数は減少の一途です。ならば、失敗のリスクを負わない大学では、技術が果てる最後の瞬間まで、流体圧駆動の可能性を探ることに、「しばらくの間」こだわってみたいと思っています。もちろん、流体圧アクチュエータにこだわるのは、「希少価値」や「根性論」からではありません。そこには、当研究室にとって惹きつけられて止まない魅力があります。それは、「駆動源とアクチュエータの分離」です。これが電動技術に対して流体圧技術がもつ「離れ技」です。当研究室の学生が試作したヒューマノイドロボットの性能がそれを示しています。

異端児なりの研究と教育

「ロボティクス学科」に所属する私たちは、実は大学で流体圧技術を学んだことはありません。フルードパワー技術の学会や業界の方から見れば「異端児」でしょう。今、ほとんどの大学で油空圧技術が教えられない中で、唯一の拠り所は、フルードパワー技術を切り開いた先人達が残された文献(論文)です。「実用ロボットにどのように役に立たせてみようか」という、一貫した強い動機から、過去の文献から知恵とノウハウを発掘し、新しい技術やアイデアを取り入れた仮説検証作業を通じて、技術をさらに進化させることを自らの使命と捉えています。制御理論や学習アルゴリズムといった従来技術は当然のように使いこなしたうえで、新しいアクチュエータを武器に独自の研究展開を行います。

21世紀に入って、センサーやIoT技術が極めて急速に普及したおかげで、センサーリッチな遠隔制御システムの導入障壁が下がっています。この好機を逃さず、本当に必要なことを実現するために、自分たちが持つ技術の利点を最大限に活かしながら研究を進めます。研究と教育は表裏一体です。世の中の大勢と異なる道に進むとき、最初は不安になるかもしれませんが、ブレない目的を持って論理的に考え、不断の努力で一歩づつ踏み固めれば道は切り開けるものです。諦めない限り、失敗はチャンスに変わります。チャレンジを通じた成長の経験を学生の皆さんと共有したいと強く思っています。

2021年10月1日 玄相昊

2021/12/22

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